「文部科学省が提供する」教員採用教養試験の傾向と対策
本学の多くの学生が受験する平成7年度(2025年度)北海道・札幌市教育委員会の「教員採用前倒し教養検査」が、終了しました。
今回の受験では、困ったことが1つ。
それは、今回の教養試験の問題が今年初めて「文部科学省」から提供されたということでした。
つまり、学生も指導教員も過去問が無いので、対策を立てることができない状況だったのです。
「文部科学省提供」教養試験問題の実際
只、前倒しで3年生が受験するのですから、基本的な問題が出題されるのではないかとの考えだけは学生と共有していました。
そして、これが文部科学省提供した教養検査の問題です。
○ 一般教養問題(文部科学省提供)及び解答
○ 教職教養問題(文部科学省提供)及び解答
「文部科学省提供」教養試験の出題傾向
- 一般教養は、英語と数学、そして一般時事の3分野に絞って出題されていた。
これは、来年度の学生にとっては取り組みやすくなると思いますが、2〜3年くらい継続して見なければ、決めてかかるのはやや危険です。
以下は、教職教養で出題された分野をグラフにしたものです。
- 教育法規からやや多く出題されていますが、それ以外は各分野からバランスよく出題されていた。
- 教育時事(通知や手引きなど)など、文部科学省「発出」のものが多く出題されていた。
- 教職教養30問中の24問が、「5肢択一問題」形式で出題されていた。
5肢択一問題は教職教養30問中の25問ですから、教職教養の問題の約8割に当たります。
それに比較して「穴埋め問題」は、わずか5 問でした。
5肢択一問題が多かったことで困惑したことが、以下の受検直後の学生の感想に現れています。
- 今回の試験について、正直に言うとそこまで自信はないです。迷いが出てしまう問いが多く、すぐ解いていくことができなかったです。
- 教職教養の殆どが「5択問題」でした。5つの選択肢から2〜3まで絞れても、残りの選択で迷ってしまいました。対策では、もっと深く読み込む必要があると感じました。
「文部科学省提供」教職教養試験対策
さて、今回実施された問題の難易度をA(易しい)からC(困難)で評価すると、教職教養は殆どの問題が
A(易しい)
レベルだと思います。
例えば、以下は5つの選択肢で適切なものを1つ選ぶ問題と解答です。
1. 指導要録 とは教育課程の基準であり,校長はその学校に在学する 児童生徒の指導要録を作成しなければならない。× 指導要録 → 指導要領
2. 校長及び教員は児童等に加える懲戒として,退学処分を行うことができる。
× 教員は、退学処分を行うことはできない。
3. 学校の学年の始まり及び終わりは,学校設置する教育委員会が定める。
× 学校の学年の始まりと終わりは、学校教育法施行規則で決められている。
4. 公立小学校の休業日は,国民の祝日に関する法律に規定する日,日曜日及び土曜日のみである。
× 公立小学校の休業日は,夏季や冬季、そして学年末休業も含まれる。
5. 非常変災,その他急迫の事情があるときは, 校長は,臨時に授業を行わないことができる。○
如何でしょうか?
ある程度学習をしている学生なら、無理なく解答できる内容です。
他の問題も、同程度のレベルです。
やはり、文部科学省も3年生が対象だということを考慮して問題を作成したと考えられます。
ですから、まずは教育原理や教育法規など各分野の「基本的事項」をしっかり学習しておくことが大切です。
「5肢択一」問題対策
教員採用試験の学習では、過去問や演習問題に取り組むと思います。
その際、「5肢択一問題として出題されたら」ということを若干意識して取組むと良いと思います。
前述の学生の感想にもありましたが、5つの選択肢から1つを選ぶ問題は「残りの2つくらいを残して、どちらだろう?」と迷うことがよくあります。
ですから、例えば学校安全に関する学習であれば、
・学校には、保健室の設置が推奨ではなく義務づけられているんだ。
・校長は、感染症にかかった時も、かかっている疑いがある時も、かかる恐れのある時も出席を停止させることができるんだ。
と、問題を解いたり間違ったりして解答を確認する過程で、「一つ一つの意味理解をしっかり」して迷いを払拭するような意識で取り組んでおくと対応できると思います。
これを、教養教養の各分野で進めていくと良いでしょう。
「教育時事」問題対策
今回の出題では、通知や報告など教育時事的な問題が多く見られました。
文部科学省作成の問題ですから、当然のことかもしれません。来年度も、答申や法改正などの出題が予想されます。
対策としては、教員養成セミナーなど教員採用試験対策の月刊誌などに掲載される「令和の日本型学校教育」「教育振興基本計画」など時事問題対策に取り組んでおくだけで十分です。
只、そこで学習したこと以外にも教育時事問題は出題されますが、それは問題ありません。
例えば、今回出題された「 児童生徒の教育相談の充実について(報告)〜生き生きとした子供を育てる教育相談作り〜」は、平成21年に教育相談等に関する調査研究協力者会議作成の報告書です。
この報告書を学習していなくても、生徒指導で学習しておけば解答できます。
また、 「特別支援教育の推進について(通知)」は、平成19年に文部科学省から発出された文章ですが、これも特別支援教育の学習をしておけば解答できます。
つまり、月刊誌が取り上げる様な「令和の日本型学校教育」「教員の働き方改革」などの教育時事は、それ自体を学んでおかなければ解答できませんが、それ以外の通知や答申などは、教職教養の各分野を学習しておけば対応できるのです。
以上、文部科学省が提供する教養試験の傾向と対策について、平成7年度(2025年度)の問題内容から記述してみました。
皆さんの受験する自治体が、文部科学省が提供する問題を使用するという情報が入ったら、参考にして頂けたら幸いです。